過去の繁栄の時代、人々はパサージュで、未来へと向かう夢を見ていた。
その19世紀の集団的な夢は、二重の意味でわたしたち21世紀人の心をうつ。一つは、それが希望に満ちた繁栄と栄華の夢であるということ。もう一つは、その夢がさして時を経ぬうちに無残にも破れたものであること。
パサージュの中には、そうした過去の人々が見た、未来へと向かうユートピア的な集団の夢が、いわば、そのまま、手付かずに残っているのである。
(鹿島茂著「パリのパサージュ―過ぎ去った夢の傷痕」より)
パリのパサージュ―過ぎ去った夢の痕跡のレビュー
(この記事はシュクルが執筆したものです。)
パサージュとは、通りと通りを結ぶ通路がガラスなどの透明な屋根で覆われ、そこにカフェやブティックなどのお店がある、日本で言えばアーケード付きの商店街のような所です。
しかし、日本のアーケードとの違いは、筆者いわく、「パサージュには、バルザックやフローベルの生きた19世紀という時代が、そのままのかたちで真空パックのように封じ込められている点にある」のだそうです。
パサージュは18世紀末から19世紀にかけて、主にパリの右岸に作られました。
今もそのまま残っているもの、もう解体されて現存していないもの、再開発やリニューアルされているものなどがあり、この本ではひとつひとつのパサージュについて、その歴史や現在の様子などが書かれています。
この本のいいところは、単なるパサージュのガイドブックではないこと。
パサージュを愛し、足繁くパサージュに通ってきた筆者の、パサージュとパリに対する想いが行間に溢れています。
その想いを感じると、19世紀からの時間が堆積し、パリの歴史が封じ込められているパサージュという空間に自分も行ってみたくなるのです。
現存するパリのパサージュは19個。
この本の第二部には、現存するパサージュの詳細なガイドが、すべて美しい写真付きで書かれているので、どんなパサージュがどこにあるのか簡単に探せます。
読んでみて、私が特に行ってみたいと思ったのは、この4つです。
ギャルリ・ヴェロ=ドダ
19世紀前半に誕生し繁栄を極め、世紀末に衰退し、150年前のさびれ具合がまるでパラフィンで凝固されたかのようにそのまま「保存」されている、まさに典型的なパサージュ。
ギャルリ・ヴィヴィエンヌ
かつてパリでもっとも美しいと称賛され、今はジャン・ポール・ゴルチエのブティックがあるパサージュ。
筆者曰く、「ギャルリ・ヴィヴィエンヌをブティックに選ぶとは、ゴルチエはきっと、最も新しいもの、それは徹底的に時代遅れになったものの中にあるというモードの法則を知り抜いていたに違いない」。
ギャルリ・コルベール
現在は国立図書館の別館になっているため、入り口で身分証明書が必要なパサージュ。
その美しさで多くの人に称賛されながら、なぜか人気はいまひとつでお客があまり集まらず、現在も人通りが少ない穴場中の穴場。
地霊(ゲニウス・ロキ)のなせる業か。
パサージュ・ジュフロワ
適度に寂れ、適度に古び、適度に賑わい、適度に品格があり、ノスタルジーと購買欲をほどよく刺激するブティックが並ぶパサージュ。
創業当時の華やかな雰囲気をそのまま残している数少ない例とか。
二つ星ホテル「オテル・ショパン」があり、筆者のおすすめはパサージュの屋根が見える409号室だそうです。
この本は、ダーリンがたまたま本屋さんで見つけたものなのですが、エッフェル塔やノートルダムといった名所とは一味違ったパリの魅力に気づかせてくれる、すごくいい本でした。
正直、パリに行く前にこの本を読んでおきたかったです。
そしたら、ぜったいパサージュに行く計画を立てていたことでしょう。
でも、あんなにいっぱいいっぱいのスケジュールでは、結局泣く泣くカットするはめになったかもしれません。笑。
次回こそは、ぜひ訪れたいスポットですね。
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