ガラス屋根から明るい自然光が射し込むマルリーの中庭。
この中庭は、ルイ14世の離宮であるマルリー城の庭園に設置されていた彫刻を中心に展示されています。
マルリー城の庭園を手がけたのは、ヴェルサイユの大庭園やチュイルリーの庭園で有名なル・ノートル。
マルリー庭園は「水」を主役にした庭園だったようで、この中庭に展示されている彫刻は、主にマルリー庭園内の水場に配されていたものです。
そして、こうした点に着目してマルリーの中庭を眺めてみると、興味深い鑑賞ポイントが浮かび上がってきます。
王の名声
マルリーの中庭は、大きく分けると三層構造になっていて、それぞれの層に、象徴的な一対の彫刻が据えられています。
最上層を飾るのは、アントワーヌ・コワズヴォが制作した一対の騎馬像です。
月桂樹の冠を頭に真実のトランペットを吹いている「天馬にまたがる名声の女神」は戦争と勝利の象徴。
一方の「天馬にまたがるメルクリウス」は、英語で言うところのマーキュリー、つまり商業の神で、平和と繁栄を象徴しています。
この「王の名声」と呼ばれる一対の作品は、ルイ14世の治世を讃えたものです。
これらの彫刻は、マルリー庭園の水飼場(馬の水飲み場)の左右に置かれていましたが、1719年にチュイルリー庭園に移設され、それからルーヴル美術館へと移されました。
少女と少年のように若々しい名声の女神とメルクリウスの姿や、空に向かって駆け上がるような天馬の躍動感を存分に味わいましょう。
ネプトゥヌスとアンフィトリテ/ラ・セーヌとラ・マルヌ
「王の名声」の下には、同じくコワズヴォの手による4つの彫刻があります。
奥にあるのが、男性像の「ラ・セーヌ」と、女性像の「ラ・マルヌ」。
その名の通り、フランスの河川を擬人化しています。
その手前にあるのは、三叉の矛を持った海神「ネプトゥヌス」と、その妻である海の女神「アンフィトリテ」。
これらは海の荒々しさと穏やかさという二つの面を象徴しています。
これらの群像はマルリー庭園の滝に置かれ、滝の上の「ラ・セーヌ」「ラ・マルヌ」から、滝を通って、「ネプトゥヌス」「アンフィトリテ」に流れていく様子を表していたそうです。
馬丁に制される馬(マルリーの馬)
マルリー庭園の「王の名声」がチュイルリー庭園に移動したために、その代わりとして制作されたのが、マルリーの中庭の第二層を飾る有名な「マルリーの馬」でした。
制作したのは、コワズヴォの甥であるギヨーム・クストゥ1世。
これまでの神話や寓意をモチーフとした彫刻ではなく、生身の人間と野生の馬を題材とした点が、当時としては革新的だったようです。
この一対の彫刻は、当初から国家の傑作彫刻作品と見なされ、革命時にマルリー城が取り壊された際も、この彫刻だけは破壊されず、コンコルド広場に移されました。
セーヌとマルヌ/ロワールとロアレ
マルリーの中庭の最下層を飾るのは、ニコラス・クストゥ作の「セーヌとマルヌ」と、コルネイユ・ヴァン・クレーヴ作の「ロワールとロアレ」です。
女性の手に水瓶があり、そこから水が流れていて、明確に川の擬人化であることを感じさせます。
これらの彫刻は、マルリー庭園の地下水部に設置されていたそうですが、残念ながらオリジナルは失われ、マルリーの中庭にあるのは2006年に復元されたものです。
水のない中庭に水を感じる
マルリーの中庭は、リシュリュー翼の代表的な展示室の一つですが、広い空間に42もの彫刻があり、結局なんだかよくわからないまま何となく眺めて終わってしまいがち。
日本の美術展のような詳細なガイドが書かれているわけでもなく、下手をするとただの休憩所になったりしています。
せっかくの芸術空間にいながら、それではもったいない。
以上の鑑賞ガイドを参考に、水のような動線の流れを感じてみてください。








