プチトリアノン宮の外には、「王妃の村里」と呼ばれるエリアがあります。
マリー・アントワネットが作らせた擬似農村です。
水車小屋や農場があり、そこではエキストラの農民がいて、牛やヤギやアヒルなど本物の家畜を飼うという絵のような田園風景を人工的に作りました。
プチトリアノンの最大の見どころは、この「王妃の村里」と言って良いでしょう。
「ベルばら」でも、この田園風景の描写が出てきます。
「ベルばら」のシーンを思い出しつつ、王妃の村里散策に向かいました。
イギリス式庭園
プチトリアノンの背後には、広大なイギリス式庭園が広がっています。
チュイルリー公園のように、左右対称に整然と造られているのがフランス式庭園ですが、イギリス式庭園は自然の景観を利用した庭の造り方です。
...ていうか、これ、庭じゃないよ?
こんなの、「庭」って言わないよ?
高原? 野原? 森?
なんか、リスとか野ウサギとか妖精とか小人とかいるでしょ?
ベルサイユに咲くバラ
広大な庭の中には、小川が流れています。
イギリスの風景画にありそうな、牧歌的な風景。
小川には木の橋もかかっていて、そこには花も植えられています。
ここもイギリスのガーデニングを彷彿とさせる雰囲気ですが、ピンクの薔薇が風にそよいで美しい。
これぞベルサイユに咲くバラ。
「ベルサイユのばら」と言うと、大輪の深紅の薔薇をイメージしますが、プチトリアノンのようなかわいらしい館を愛したアントワネットは、ほんとはこんな可憐なピンク色の小ぶりな薔薇が似合う女性だったのかもしれません。
愛の殿堂
小川を渡って向かうのは、愛の殿堂と呼ばれる東屋。
古代のギリシャ神殿風の美しい東屋です。
ここで、アントワネットは恋人のフェルゼン伯と逢引をしたと言われています。
と言っても「ベルばら」ではそんなシーンはなく、この「愛の殿堂」は、「トリアノンの丘の上にそびえる小さな愛の神殿」として描かれ、その他にはアントワネットがポリニャック伯夫人にお芝居の話をする場面に登場します。
「愛の殿堂」というロマンチックな名前は、中に愛の使いキューピッドの像があるため。
アントワネットもここでフェルゼンと愛にあふれた会話をしたのでしょうか。
王妃の家
さらに歩いていくと、いよいよ王妃の村里に到着。
湖を中心に、田舎風の建物がいくつか建っています。
そのメインと言えるのが、王妃の家。
「王妃の家」という名前が不似合いなほど、いかにも田舎風の外観で、周囲の自然とぴったり合っています。
田舎風の家というのは、当時の貴族の趣味のひとつだったようです。これらの家は愛の殿堂も手がけた建築家リシャール・ミックによって建てられたもので、外観はノルマンディ風に、内装は外観とは違って洗練された空間になっているそうです。
水車小屋
木の水車がかかっている水車小屋。
ここにも、王妃の家と同じく花が飾られていて、とてもかわいらしい外観になっています。
きっと、この水車の下には小川も流れていたのでしょう。
緑の芝生、石造りの壁に藁葺きの屋根、木の柵...。
ここがベルサイユだということを忘れてしまいそうです。
アントワネットはまさにそのために、王妃という立場も、義務も、宮廷のしがらみも忘れるためにここを造らせたわけですから、当然といえば当然ですが。
湖の白鳥
王妃の村里は、湖のまわりを農家風の建物が点在しています。
その湖も自然のものではなく、アントワネットが造らせた人工湖。
「ベルばら」でも、アントワネットが「プチトリアノンのまわりには、すばらしーい田園ふうの庭園をつくるわ...! 水車小屋や農家もつくってお池もつくって......あ...あ そのお池にはほんもののあひるをうかべるの!」と言ってました。
それがこの湖なんですね。
ルイ・シャルルも、「ぼくが見つけたんだよ トリアノンのお池にかもがきたの!」と喜んでましたね。
マルルボローの塔
まるで湖の中に建っているような、マルルボローの塔。
螺旋階段が美しいこの塔は、「魚場塔」だそうで、酪農場から回廊で結ばれていて、ここに上って魚釣りを楽しんだようです。
「マルルボローの塔」という名前は、王太子の乳母が子守歌として宮廷に持ち込んだ「マルルボローの歌」からつけられたのだとか。
当時の王太子といえば、ルイ・ジョゼフ。
あの短い生涯だった美しい王子の聴いた子守歌は、どんな歌だったのかなあ。
塔の前を優雅に横切る白鳥の姿を、アントワネットもルイ・ジョゼフも楽しんだのでしょうか。
農場
湖から少し歩くと、農場があります。
鶏、山羊、あひる、牛、ロバ、うさぎなど、たくさんの動物が飼われていました。
アントワネットの時代も、エキストラの農民が乳搾りをしたりしていたそうですが、今も本物の家畜がいるんですね。
敷地が広いのでこんなこともできるのでしょうが、他にも、野菜を作っていたりブドウ畑があったり。
ここはアントワネットが造った農村テーマパークだったわけですが、テーマパークというよりも、本物の田舎の農家に遊びに来たかのような気分になります。
池から王妃の家
それにしても美しい風景です。
ほんとに、ここがあのきらびやかなベルサイユ宮殿と同じ敷地内とは思えないほど。
そして、これが人工的に造られたものだというのも信じられないくらいです。
アントワネットは「冷たい大理石の金や銀の彫刻ですきまなくうめつくされた巨大な宮殿」から抜け出して、このユートピアで現実を忘れて暮らしていたんですね。
そんな愚かで哀しい王妃はギロチンの露と消えましたが、200年以上経った今も、のどかな風景は変わらずに目の前にあります。
岩山と見晴らし台
のんびり散歩気分でてくてく歩いて行くと、また小さな池があって、岩山があります。
ちょっと探検気分でおもしろいところです。
隣にある白い建物は、ヴェルヴェデーレと呼ばれる見晴らし台で、夏に涼をとるため、そして音楽鑑賞のための建物。
八角形の優雅な外観で、入口には女神の顔をしたスフィンクス像があり、中には音楽をモチーフにした優美な絵が描かれています。
群集がパリからヴェルサイユに向けて行進しているという知らせをアントワネットが聞いたのは、このあたりを散策中のことだったとか。
ユートピアから現実に引き戻され、ヴェルサイユに戻ったアントワネットがこの風景を見ることは二度となかったのです。
フランス式庭園とフランス館
村里散策もほぼ終わり、プチトリアノンに戻って来ましたが、トリアノン宮の目の前にはフランス式庭園があります。
きれいに刈り揃えられた左右対称の庭。
広大すぎるイギリス式庭園を見た(というか、歩いた)後では、あまりの小ささに妙にほっとしますが、これで「小さい」と感じるあたり、かなり感覚が麻痺してますね。笑。
奥に見える曲線が優美な建物は、フランス館。
ここは食事会やコンサート、パーティーが開かれ、アントワネットお気に入りの場所だったそうです。
見学ルートは案内図でよく確認を
こうして王妃の村里の見学は終了です。
後でよくよく案内図を見返してみると、トリアノン宮からフランス式庭園などを見てから岩山に向かい、イギリス式庭園を経て農場・王妃の家などを見学、最後に愛の殿堂を通ってトリアノンに戻るというのが通常のルートのようです。
私たちは、全く逆ルートで行ったわけですね。
おかげでフランス館近くにある王妃の劇場を見逃してしまいました。笑。
しかし、この日のお天気が、スタートしたころは晴れだったものの、トリアノンに戻ってくるころには曇り始めていたので、晴れているうちに愛の神殿や王妃の家、マルルボローの塔を撮影できたのは結果オーライだったのかもしれません。








