Home / 甲信旅行記 / 神長官守矢史料館とミシャグジさま

Apr
15
2011

神長官守矢史料館前宮から本宮までは車で5分ほどの距離ですが、その前に、途中にある「神長官守矢史料館」を見学します。
この守矢家は、諏訪の先住民族の長であった洩矢神(もりやのかみ)の子孫と言われ、明治の初めまで諏訪大社の神長(筆頭神官)を勤めてきた一族でした。
しかし、明治に入り、神官の世襲制が禁じられると、諏訪大社の神長という職も失われてしまいます。
この史料館では、守矢家の現当主である守矢早苗氏から提供された、守矢家に代々伝わる資料を保存・公開しています。

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土着神話 vs 中央神話

さて、この守矢家の祖先と言われる洩矢神は、諏訪大社の成り立ちに大きな関係があるようです。
旅行記冒頭で触れたように、諏訪の地には「出雲の国譲り」とは別の国譲り伝説があり、両者の神話を合わせて解釈すると、だいたい次のような経緯があったと考えられます。

「出雲の国譲り」でタケミカヅチとの力比べに敗れたタケミナカタが諏訪にやってきたとき、諏訪盆地には狩猟・採取を営む先住民族が暮らしていました。
諏訪の先住民族は、現在の前宮周辺を中心に、土着信仰であるミシャグジ神を崇敬し、その祭事を執り行っていたのが洩矢神と呼ばれる族長です。
出雲からやってきた稲作民族であるタケミナカタと、狩猟民族である洩矢神は、天竜川を挟んで激しく戦いますが、この戦いに勝ったのはタケミナカタでした。
戦いに勝利したタケミナカタは諏訪大明神として祭られ、その子孫は生神である「大祝(おおほうり)」と呼ばれるようになります。
その一方で、戦いに敗れた洩矢神の子孫も、「神長」として神事を執り行い、祭祀と政治の実権を持ち続けたのです。
こうして、諏訪の地は大祝と神長による新しい体制が固まり、稲作以後の新しい時代を生きていくようになります。

その後、大和朝廷による中央集権化の中で、祭祀の画一化が推し進められたため、諏訪信仰の中心地も、土着式の前宮から大和式の本宮へと移って行ったのでしょう。
しかし、現在の諏訪大社の祭祀の中に、ミシャクジ信仰の影響が色濃く残っているのは、こうした大祝と神長の祭政体制が関係していると考えて間違いないと思われます。

ミシャグジさま

御頭御社宮司総社守矢史料館の敷地の奥には、「御頭御社宮司総社」という小さな御堂があり、それがミシャグジさまを祭ったものです。
では、ミシャグジさまとは、どのような神なのでしょうか。
守矢早苗氏によると、ミシャグジ神とは、樹や笹や石などの自然物や、大祝に降りてくる精霊だそうです。
ミシャグジさまを「降ろす」「上げる」のも、神長である守矢家の神事であり、それらの技を含めた様々な神事の方法は、一子相伝で口伝えに伝承されたといいます。
しかし、それも残念ながら明治で絶えてしまい、現在ではわずかな史料が残るばかりだそうです。

御頭祭の復元

御頭祭の復元守矢史料館は、たった2つの展示スペースしかない小さな史料館ですが、その展示内容は衝撃的です。
鹿や猪の頭部、串刺しになった白兎、鹿の脳と茹でた鹿肉を混ぜ合わせた「脳和(のうあえ)」という料理などなど...。
御頭祭で供えられるという神前供物の復元は、まさしくシャーマニズムを彷彿とさせます。
御頭祭が行なわれるのは前宮の十間廊ということですが、おそらく御頭祭は、ミシャグジ信仰から続く神事なのでしょう。
この展示を見て、あの前宮のどことなくおどろおどろしい雰囲気が、妙に納得できたように思いました。

Native Faith

茅野市が発行している「神長官守矢史料館のしおり」(史料館にて200円で購入)には、次のような記述があります。

信州の厳しい自然の中で自然と共に生きた人々の祭りや心の様相が復元されることを願い、家に伝わります事柄をでき得る限り記して、皆様方のご参考に供します。

たしかにここは、仏教や政治が入り込む以前の日本の土着信仰のひとつの形を感じられる場所といえます。
自然の中に神が宿ると信じていた古代日本人の姿は、今でも私たちの中に受け継がれているものではないでしょうか。
そんな日本人の根源に触れて、神秘的ながらも、何か奥深い、ぞっとしたものを感じるのでした。

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竜神信仰―諏訪神のルーツをさぐる
竜神信仰―諏訪神のルーツをさぐる大庭 祐輔
内容
天に竜がすみ雨と共に水中におりる。
天竜の考え方は古代朝鮮にあるが、諏訪には古代朝鮮につながる遺物が多い。
その文化の、ひとつは伊勢を経て、ひとつは出雲から日本海、越後を経て、諏訪へともたらされた経緯を解明。
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