Home / 東京旅行記 / 世界フィギュア選手権2014・女子フリー観戦記

Apr
27
2014

世界フィギュア選手権2014・女子フリー観戦記

フィギュアスケート世界選手権・女子フリー。
ショートプログラムの時は緊張と興奮と感動で、自分でもわけがわからない状態だったので、観戦記もありのままの自分の気持ちをつづってみましたが、フリーではもっと冷静に振り返って、18,000人の大観衆に見守られた真央ちゃんの集大成のフリー演技を、私なりに書いてみようと思います。
少々長くなりますが、おつきあいください。

- スポンサードリンク -

ショートプログラムを終えて

ショートプログラムが終わって、真央ちゃんは完璧な演技をして世界最高得点の記録を塗り替えた。
とにかくショートでソチ五輪の悪夢を払拭してほしいと願っていたが、おそらく多くのファンが私と同じ思いだったのではないかと思う。
それくらい、ショートの時の会場の緊張感とテンションの高さは、尋常じゃなかった。
それが、真央ちゃんののびのびした演技と幸せそうな笑顔を見て、一気に憑物が落ちたように楽になった。
もう負ける気が全然しなかったし、恐くもなかった。
というか、勝ち負けとかどうでもよくて、真央ちゃんの最後のラフマニノフがどんなものになるのか見届けたいという気持ちだった。

最後のラフマニノフへ

真央ちゃんは最終グループの3番目の滑走。
相変わらず声援がすごい。
ポーズをとって、曲が始まった。
ラフマニノフの荘厳なピアノの音が流れ、和音の連打でトリプルアクセルに向かうまで緊張感が高まって行く。
それまでの規則正しい連打から、一気になだれ込むピアノの旋律と、他のジャンプより一段と高い身体の上昇と素早い回転が合わさって、そこに旋風が起きたようになる。
大歓声が爆発して、すぐにトリプルフリップ・トリプルループ。
セカンドのトリプルループができるのは、世界でも数人という難技だ。
みんなそれがわかっているから、緊張して見守る。
これも決まって、また大歓声、あとはそのまま音楽と真央ちゃんの滑りにぐいぐい引き込まれてしまう。
ルッツも決まった。ずっと緊迫したまま、息もできないくらい、まばたきもできないくらい真央ちゃんを追う。

スピンの後、前半部終了の決めポーズのあと、はっと空を見上げる印象的な振り付けで始まる中間部のスローパート。
張りのあるポジションで緊張感を保っていた腕の動きが、柔らかくしなやかに変わる。
流れるような美しい動き。
見ているほうも、緊張から解き放たれる。
ダブルアクセルの後バランスを崩してコンビネーションにできなかった時にはヒヤッとしたが、すぐに持ち直す。

それまで木管楽器とピアノで奏でられたゆったりした音楽を破るように金管楽器の音が入って、曲は劇的な様相を帯びてくる。
その変化に合わせたように高いトリプルサルコウが決まると、曲は激流のようにどんどん速くなり、真央ちゃんの滑りもそれに合わせてどんどん速くなる。
弦楽器のメロディーが入って、そこでトリプルループ・ダブルループ・ダブルループの三連続ジャンプ。
セカンドループは、軸足を氷につけたらすぐに同じ足で飛び上がるので、流れが途切れず美しい回転の残像を見ている側に残す。
三連続を全部ループで構成でき、しかも後半にこれを飛ぶことができるのは、世界でも真央ちゃんだけ。
流れるような弦のメロディーと、流れるようなループの連続がマッチして思わず感嘆の声が出る。
そのままピアノの旋律とオーケストラの旋律が掛け合うような奔流の中で得意のトリプルループが決まり、右手をなぎ払うように力強く開いてからスピン、曲は最高潮に盛り上がる。
このまま終わってもいいくらいの盛り上がりの後、最後の超絶ステップへ。

ラフマニノフのピアコン2番と言えば、誰もが思い浮かぶ印象的なフレーズに合わせたステップは、音楽の力強さがそのまま身体からほとばしり出るエネルギーとなって、会場中に放出される。
これだけの高難度プログラムで、最後はへろへろになってもおかしくないのに、むしろエネルギーがさらに充溢して解き放たれたようなステップに、18,000人の観客が釘付けになっている。
リンクの端から端までのストレートラインステップの後、最後に曲のクライマックスの加速に合わせて真央ちゃんの滑りも一気に加速して、またリンクの端まであっという間に駆け抜ける。
走っているわけではないが、「疾走」としか表現できないほどの速さだ。
私は、このプログラムの中で、この部分が一番好きだ。
その勢いのまま、エネルギー体の放射そのもののような超絶難ポジションのスパイラル、そしてフィニュッシュ。

会場を揺るがす大歓声と、すごいものを見たという感動と、真央ちゃんへの祝福と感謝と、いろんなものがごちゃまぜになって、ただただ拍手し続け、涙が流れ続けた。

私たちが浅田真央を愛する理由

タラソワはインタビューでこう言っている。
「振り付けを行うことは、真央に音楽という名の衣装を仕立てるようなものだ」と。
あの日、私が見たのは、音楽と、浅田真央の身体の、幸福な融合だった。
そこに一切の夾雑物は無い。
何かを意図的に「演じて」いるのではない。
浅田真央の心と身体がラフマニノフの音楽と溶け合って作り出す最高難度のパフォーマンスが、空間を満たし、私たちの心を揺さぶるのだ。

彼女はインタビューで「スケートとは?」と聞かれて、「自分」と答えた。
「ソチのショートもフリーも、自分。酷い失敗をしたり、最高の演技が出来たり。リンクに立ったら、もう一人なので」と。
私たちはなぜ浅田真央が好きなのか。
彼女はいつも、素の「浅田真央」を見せてくれたから。
決して観客に媚びたり、自分を良く見せようとしたりしない、ありのままの姿。
時にはそれが勝ち負けとズレてしまうこともあって、戦略的にダメなんじゃないかとハラハラさせられたりした。
しかし、彼女がこだわっていたのは勝ち負けではなかった。
そして、私たちが愛している浅田真央は、勝つための戦略を練って力をセーブするような選手ではなく、いつも自分と向き合って、自分を高めようともがく浅田真央だ。

タラソワは言った。
「この曲目を通じて、彼女はこれまでのフィギュアスケート人生の全てを表現するのよ。困難を克服すること、それがこの演目のテーマ。もし、真央がラフマニノフの調べにのって全ての演技を終えることができたら、それこそが困難を克服したということ。一人の人間の人生、一流のスケート選手の人生を表現したことになる。」
タラソワの言葉の通り、私はあの日、浅田真央のパフォーマンスを通して、浅田真央の生きている姿を見、生きているエネルギーを感じた。
浅田真央のラフマニノフは、間違いなくフィギュア史上に残る伝説の作品だ。
それをこの目で見られたことは、私の一生の宝物になった。

幸福な春の夜はふけて

こうして世界選手権女子フリーは終了し、真央ちゃんは見事3度目の世界女王に輝きました。
正直、ジャッジのひどさに関しては、いくら書いても書き足りないくらいくらい腹が立ち、これからのフィギュア界を思うと、ノドにささったトゲのような嫌な予感もありました。
でも、真央ちゃんは、自分の出来を「100点満点」と言っていたので、真央ちゃんとしては満足な結果なんだろうと思います。
せめて今日くらいは幸福な気持ちのままでいようと、新潟までの深夜バスに乗り込みました。
これで、シュクルのプチ東京滞在も終わります。
夜空を見上げながら、思い出したのは、アンサイクロペディアの一節でした。

我々はみな氷の上で子供じみたいざこざを続けているが、マオだけは星を見つめながらチャルダッシュを踊っている。
(アンサイクロペディアより)

ワールド・フィギュアスケート 63
ワールド・フィギュアスケート 63ワールド・フィギュアスケート
おすすめ平均
stars今シーズンの集大成の本です
stars浅田選手、羽生選手、町田選手の特集号です。
stars読み応えばっちりです!
Amazonで詳しく見る

- スポンサードリンク -

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Comments:4

higuaya 2014年4月27日 21:24

シュクル様
こんばんは。旅行記執筆お疲れ様でした。
シュクル様渾身のフリー感想、何度も読み返して、ラフマニノフの構成を思い出して、密度の濃さに驚きました。浅田選手の演技を、本当に息をつめて、見ていらしたのですね。素晴らしい感想を読ませていただき、ありがとうございます。
点数に関しては、「これ以上減点できない」と思える点数で、あの点が出たことを、ソチを含め、素直におめでとうと言いたいと思っています。そして、その点数を越える感動をくれたことに、ありがとう、ですね。
オチがアンサイクロペディアだったのも納得しました。この一節、秀逸ですよね。「スケツー」の記事の浅田選手の内容も、なんだかぶっとんだ記事に、現実が追いついてしまった感じがします。
そして、これからも、スケート観戦されることがあれば、是非感想を記事にしていただきたいと思います。今回みたいな文体も好きです!

シュクル 2014年4月28日 22:55

higuayaさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
何度も読み返していただいたなんて、いや~、恥ずかしいです。
ありがとうございます。(〃∇〃)
ラフマニノフは、ソチのフリーを完全脳内再生できるくらいリピしていたので、曲と動きがよくわかっていたし、ワールドでの演技も息するのを忘れるくらい見入ってました。
今回は変な声は出ませんでしたが。笑。
ところでスケツーまでご存知とは、higuayaさんは相当なスケオタと見ました。あれ、私も大好きで、おっしゃるとおり現実が後追いしたような感じですね。
真央ちゃんのフリーの感想を書くにあたっては、言いたいことを表現しようとしたら、こうなってしまって。
なんだかいつものシュクルとは異質なんですけど、この文体でしか書けませんでした。
次、もし何かの観戦記があるとしたら、どんな感じで書けるのか自分でもわかりませんが、がんばります。笑。

higuaya 2014年4月29日 13:32

シュクル様
お返事ありがとうございます。
フリーの構成を覚えて臨まれていたとはさすがです!フィギュアスケートって、本当にいいものですよね。お金に羽根が生えてとんでいきますけど。(笑)
シュクルさんの記事を参考に、THEICEで一番ランクの低い席を狙ったら、うっかり全当選してしまって、頭を抱えているところです…高速バスとカプセルホテルかな…(笑)

シュクル 2014年4月29日 22:38

higuayaさん、こんばんは。
全当選とは、higuayaさん、気合入ってますね!
嬉しい悩みですね。でもうらやましい。私も日程が許せば、連日通いたいところです…。
THE ICE、私も一番低いランクの席で当選しました。
性懲りもなく、いい席を狙った挙句の第三希望当選ですけど。笑。
大阪なので、往復高速バスの予定です。
我らが旅の相棒・なまこくんがあれば、高速バスも怖くない!笑。

Comment Form

コメントは管理人の承認後に公開されます。

Information
  • twitter
  • rss
  • はてなブックマーク
  • Instagram
カテゴリー
タグクラウド
記事への反応

back to top